2016年11月30日水曜日

夜間走行はつくづく怖いと思う

今年の冬至は12月21日だとか。それまではどんどん日没が早くなります。運転が上手くないのは認めますが、夜間走行ってつくづく怖いなぁと思います。

これは夜明け前。コーナーに街灯があるのとないのとでは大違いだと思う

明るい街中は別として、夜間走行が怖い理由を考えてみました。


  1. コーナーに進入する時はバイクのヘッドライトが現に照らしている方向より先に視線を送るわけですが、街灯がなければ視線の先は真っ暗。つい、ヘッドライトが照らしている方向を見てしまい、うっかりまっすぐ進みそうになる恐怖。ハンドルを切った角度に合わせてヘッドライトが動く車種ならまだしも、カウルに固定されているようなバイクってどうなんでしょう?
  2. 街灯の無い下りコーナー+進行方向に平行に溝を掘るグルービング工法が施された道はさらに恐怖。タイヤのパターンによってはグルービング工法も気にならないのかなぁ。
  3. 対向車がHIDだと一瞬視界が奪われます。後続車がHIDでもミラーが強烈に反射して見えにくい。
  4. どうやら夜間の車は、視界が狭くなるせいか自然とスピードが出るらしい(おそらく自分もそう)。だから相対的に煽られているような気になるのかも。コーナーに入る前に十分に減速したいけれど追突されたらどうしようという恐怖。

己を知れば、夜間走行をしないにこしたことはないなぁと思います。でも遠くへツーリングに出かけると夜間走行は避けられないので、遠回りでも明るい道を選ぶか、後続車があれば躊躇せず先に行ってもらうとかして身の安全を確保するのが大事だなぁと思います。

関係ないけど、The La'sはカッコいいなぁ。

2016年11月26日土曜日

フロントタイヤを交換したよ ダンロップTT100GP

フロントタイヤがすり減っていたので、交換しました。う〜、財布の中身が〜。ダンロップTT100GPです。完全に別のタイヤにするタイミングを逸しました…。

オレンジのラインを消したくてしょうがない

ちなみに交換前は…。

お〜こわ

新しいタイヤは滑るというので、いつものように100kmのならし走行に出発。本当は久万高原町に抜ける交通量の少ない峠道を走りたかったのですが、天気がイマイチ、防寒をウッカリなどもろもろの事情で、幹線道路メイン。

100km走行したけれど、残念、オレンジのラインはクッキリ…

気分的に安心できたのでOKとします。

ちなみに右側が片減りしていた問題ですが、バイク自体には問題なかったようです。新しいタイヤで様子を見てみようと思います。

2016年11月22日火曜日

丸型ハーフNDフィルターのこと

写真を撮っていて悩ましいのは、明暗差の大きい被写体だと明るい部分が白一色になってしまう「白飛び」や、暗い部分が真っ黒になってしまう「黒つぶれ」してしまう問題です。光の情報がなくなってしまうので、補正ではどうしようもありません(多分…)。

露出をどこに合わせるかということが重要になってくるのですが、それでも限界があります。そこで、明暗差のある被写体に対して力を発揮するというハーフNDフィルターを購入してみました。


Kenko NDフィルター R-ハーフ ND4 49mm



半分だけ減光処理が施されているので、例えば水平線に沈む夕日などは、水平線より上の太陽の光を減光させ、空も海も撮ってしまうという感じでしょうか。被写体に合わせて角度を変えることが出来ます。

半分だけNDフィルター

上のハーフNDフィルターは49mmです。現在使用しているレンズのフィルター径は37mmと46mmですから、このままではレンズに装着できません。そこでステップアップリングを購入。

これはMARUMI ステップアップリング 37mm →49mm

レンズ➝ステップアップリング➝ハーフNDフィルターと装着します。購入したMARUMIのステップアップリングは非常にお安いにもかかわらず、溝がきちんと彫られていてゆるくもきつくもありません。

早速試してみました。綺麗な夕日ではありませんが、ものは試しということで。

露出をどこに合わせるか、測光方式をどうするかという問題もあるとは思うのですが、ひとまず深く考えずハーフNDフィルター無しで撮ってみると、明るい所ではかなりの範囲で白飛びしてます。

ハーフNDフィルター無し

今度は同じ設定のままでハーフNDフィルターを装着して撮りました。減光処理させた部分は上半分。白飛びは明るい部分の中心ぐらいに収まりましたし、雲の表情が随分見えるようになりました。実際は、露出を変えながらいろいろ撮影すればいいんだと思います。

ハーフNDフィルター有り

丸型NDフィルターは小さくてツーリングに携帯するには便利なのですが、一番の問題は、減光処理させる部分が必ず全体の半分を占めるということです。

その点、角形ハーフNDフィルターはかさばりはするものの、角度だけでなく、フィルターを差し込む位置によって減光処理させる部分(ハーフグラデーションフィルターなら色をつけたい部分)を任意に決めることができます。だったら角形の方が絶対いいじゃんってことなんですが、ちょっとお値段が…。安いのはいくらでもあるんですが、安物買いの銭失いを数多く経験してきているのでちょっと手が出ません。

そんなこんなで夕日や朝日を撮るのを楽しみにしながらツーリングに出かけようと思います。

関係ないけど、SEALが沁みるなぁ。

2016年11月18日金曜日

フロントタイヤの右側がすり減る片減り問題

ふとフロントタイヤを見たら…。

こりゃ交換かな?

何や知らん、進行方向に対して右側(写真では左側)がやけに擦り減ってます。リアタイヤは片減りしていないようなんですが。原因についてちょっと調べたら、乗り手の問題、バイクの問題、路面の問題、空気圧の問題などいろんな要因があるようです。乗り手が下手ということは否定しませんが、バイクに問題があるようなら文字通り問題です。交換する時にバイク屋さんに聞いてみようと思います。

「バイクに問題はなかったですよ」と言われたら、路面の問題もさることながら乗り手の問題にもなるので、ほっとしていいのか、下手さ加減を思い知ってショックを受けるのか…。

ちなみに遡ってブログを確かめたら、前回交換してから約15,000km走っていました。

新品に交換し約9,000km走った段階

ちなみに、新品タイヤは…。

こうして見てみると新品って溝が深いわぁ〜

バイクにちゃんと乗るって、お金かかるんだね…。

2016年11月14日月曜日

ツーリング動画をつくってみた【愛媛・大川嶺の雲海編】


あ!「大川峰」ではなく「大川嶺」の表記間違いです…

愛媛県道328号線が冬季通行止めになる前に、早朝の大川嶺に足を運んできました(11月12日)。

午前4時半出発。三坂第一トンネルを抜けた途端、久万高原町内は濃い霧の中。レイングローブがなかったため地味にグローブが濡れてしまい、止む無く足止めをくらいました。地元の方にお聞きしたらこの日の霧は深い方で、午前9時ぐらいまで霧に包まれていることもあるとかなんとか。

時間的には大川嶺で日の出を見れるように自宅を出発したものの、霧があまりにも濃いならば危険この上ないということで霧が和らぎつつ空が白むのを待ち、気がつけば午前6時半。さすがに霧の上がどうなっているのか気になり、余り使いたくないけれど同じぐらいの標高の四国カルストライブカメラをスマホで検索したら晴れ!。

再び大川嶺を目指しました。日の出の瞬間には間に合いませんでしたが、霧を抜けると朝日が照らしだす周囲のやまなみと足下の雲海が美しく、心が震える朝のひとときでした。

途中、2台の車が下りてきたのですが、天気と場所を知っている人が写真を撮りに行っていたようです。その瞬間の光景をみたかったなぁ。

ちなみに先日の大川嶺はものすごく寒かったのですが、この日は驚くほど暖かかったです。

ヘルメットにマウントしたコンツアーは水滴でぼんやりしていますが、それはそれでいいかなぁということで動画にしてみました。

2016年11月10日木曜日

冬のツーリングにZippo ハンディウォーマー

晩秋から冬のツーリングでつらいのが指先の凍えです。バイクに乗っている時はグリップヒーターで温かさを保つこともできます。しかし、コーナーが連続するところではグリップを握りっぱなしというわけにもいかず、ハンドルカバーでもなければ指先がだんだん凍えてきます。バイクを降りて写真を撮っていると、どうしても指先を露出した方がやりやすい作業もあります。

先日、寒風吹きすさぶ大川嶺に行き写真を撮っていたのですが、やはり指先を温める何かがほしい。冷えきったグリップヒーターはすぐには温まりませんし。数カ月前、引き出しの中から、学生の頃にカッコつけて使っていたZippoライターが出てきました。以来、Zippoライターを使っているのですが、共通のオイルで使えるZippo ハンディウォーマーなら使い捨てカイロより経済的かなぁと。いやいや、煙草を吸う時点で家計にとっては非経済的です…。

そんなこんなでZippo ハンディウォーマーを購入してみました。


Zippo HANDY WARMER Oil Set



何や知らん、iphoneの外箱チック


133mlのオイル、注油カップ、フリース素材の専用袋がセットです


Zippo ハンディウォーマーの使い方



Zippoハンディーウォーマーは直接オイルを燃やすのではなく、気化したオイルがバーナー部分にあるプラチナの触媒作用で酸化発熱する化学カイロです。使い捨てカイロより環境にやさしいのかな?

ではその使用方法を、アウトライン程度に紹介します。

ウォーマー本体からバーナーを取り外すと注油口が現れる

ウォーマー本体からバーナーを取り外すと注油口が現れます。ここに付属の注油カップでオイルを計量し、注油します。

計量に使用する専用の注油カップには上下2本の線があり、ウォーマー本体のタンク最大容量は上線2杯分まで。最大容量の注油で約24時間使用できるとあります。使用したい時間に合わせてオイルの量を調節します。

余分なオイルの入れ過ぎは十分な発熱を得られない原因になるそうです。(最大容量近くまで注油した時のことだと思いますが)注油後、バーナーを取り外した状態で注油口にティッシュなどを軽く詰めて1分ほど本体を逆さにして余分なオイルを染み込ませます。Zippoオイルはとても引火しやすい燃料ですので、オイルが染みこんだティッシュは火気に十分注意して処分します。

また、注油口のフチとオイルを染み込ませた綿の上面との間に5mm程度の余裕がないと十分にオイルが気化せず、温かくならない原因となるようです。

オイルを注油しバーナーを取り付けたらいよいよ点火

マッチやライターの火でバーナーを燃やすのではなく炙って温めます(3〜5秒で温かくならない場合は10秒程度とのこと)。火をバーナーに近づけ過ぎるとプラチナ触媒が劣化したり、本体を逆さまにして炙るとライターのススで触媒の劣化が早まるそうです。ということは上の写真のようにして温めればいいのかな。

ちなみにバーナーの耐用発熱回数は70〜90回程度とのこと。Amazonでは600円ぐらいで売っていますね。

ライターのように燃える火が見えるわけではありません。点火できたかどうかの確認方法は、バーナーにウォーマーのキャップをくっつけ、水蒸気によるくもりが確認できればOK。

キャップをして専用袋に入れて使用します。専用袋に入れても熱い場合はさらに布等に包んで使用するようにとあります。


で、実際どうなん?



試しに下線1杯分(おおよそ6時間分)を注油してみました。専用袋に入れない状態ではとても温かいのですが、専用袋に入れると冷たくなった指先を温めるには物足りません。これは、オイルの量に起因するのでしょうか?

この記事を書いている部屋は暖房を効かせておらず、室温は14.5℃。ハンディーウォーマーを専用袋に入れない状態でデニムのバックポケットに忍ばせています。キーボードを打つ手が冷たくなるのでハンディーウォーマーを手に取ると、みるみる温度が下がるのが分かります。バックポケットにしまうとすぐに温かさを取り戻します。発熱する量と奪われる熱の量が結構微妙なのかもしれません。

それは、取扱説明書の「よくあるご質問」の「暖かくならない」「A4」に、「ハンディーウォーマーを放置した際に熱が外に出てしまう為、外気が冷たい場合は暖かくならない場合があります。必ずポケット等に入れてお使いください」とあることからも分かります。

バックポケットの上からの方が、専用袋の上から触れるより温かい。ということは、専用袋は断熱の効果が大きいのかな?

発熱を途中で止めることはできません。「発熱途中で不要となった場合は、安全な所におき、完全に放熱させてください。寒い所に置くと立ち消えして、次回のオイル注入の際に入れ過ぎの原因となります」だそうです。

メンテナンスも含めて使い方が温かさを大きく左右するアイテムのようです。ないよりはマシ程度に考えてツーリングに携行しようと思います。たっぷりオイルを入れたらもうちょっと温かくなるかもしれないですしね。

【追記】
先日、早朝の大川嶺に行く時、上線1本分(12時間分)入れたところ、気化する量が多いのかどうか分かりませんが専用袋に入れても非常に温かく、感覚的には倍以上あたたかかったような気がします。朝4時ぐらいに注油して、深夜まで温かさが持続しました。

2016年11月7日月曜日

ツーリング 久万高原町にて紅葉狩

11月は紅葉シーズン。美しい紅葉を求めて、W650とともに久万高原町をツーリング。


DABUROKU TOURING No.18発刊



大川嶺分岐からブナ林を縫う愛媛県道328号線にて


今年の紅葉はやはり遅い 面河渓



朝、空を見上げると北の空は灰色がかっているものの、南の空は比較的明るい。前日の天気予報が、大陸から寒気が張り出すため日本海側は曇り、一方太平洋側は晴れと言っていたことを思い出す。

行き先を決めないままツーリングに出発するのはいつものことだが、そんなツーリングにあって、おおまかな方向を決めてくれるのはたいてい「空」だ。僕とW650は一路南を目指すことにした。12月になれば大川嶺へ通じる愛媛県道328号線が美川スキー場より先で通行止めになる。それまでにもう一度ぐらいは大川嶺に行っておきたいという気持ちも働いた。

久万高原町のコンビニで小休止。喫煙所で煙草を吸っていると後からやってきた年配の男性が隣りで煙草に火を点ける。

「すいません。地元の方でしたら、面河渓の紅葉の様子をご存知ですか?」
「そうだね。今年は暖かい日が続いたからまだ間に合うかもしれないね」

聞けば、例年は11月3日の祝日の頃にはもみじが散ってしまうらしく、それは冷たい面河渓の水温によるところが大きいようだ。

男性は、色づく時も散る時も一気に進むと言った後で、「もしかしたら散っているかもしれないけれど」と少し自信なさそうに言葉を継ぎ足した。「水面を流れるもみじもそれはそれで綺麗だと思うので行ってみます」と礼を言い、面河渓を目指すことにした。

国道494号線から愛媛県道12号線へ。「もみじライン」という看板が掲げられている通り、もみじがそこかしこで風に揺れている。色づき方は一様ではないが真っ赤なそれもあり、面河渓への期待は高まる。

振り返れば紅葉シーズンまっただ中の面河渓を訪れたのは初めてだった。その美しい景色を目にとどめようと多くの人が訪れている。「今日は写真で紅葉狩りでもしてみるか」などと思いながら、僕は遊歩道を上流に向かって進む。

しかしなかなか思うように色づいたもみじにめぐり逢えない。ため息混じりにぼんやりしているとカメラを手にした男性から声を掛けられた。

「向こうに行ったら滝がありましたよ」

紅葉に関する情報交換をと思うが、お互いため息が漏れてしまう。やはり紅葉は来週ぐらいが見頃のようだ。

男性に教えてもらった滝は、案内を見ると虎ケ滝とある。まだ色づいていないもみじと、その向こうに見える虎ケ滝が何とか一枚の絵になるような場所を探して面河渓に来た証としよう。

奥に見えるのは虎ケ滝

面河山岳博物館まで引き返し、遊歩道を上流に向かう途中で


きじ肉うどんで心も体もあたたまる 



面河渓を後にして、国民宿舎古岩屋荘へ。見れば駐車場のテントでは「名物 きじ肉うどん」が一杯500円。朝から食べたものといえばおにぎり3個。これから標高1500mの大川嶺に行こうと考えていたこともあり、体を内側から温めておくことにした。

きじ肉からとった出汁が効いている

うどんつゆは甘すぎず辛すぎず。これがトッピングのごぼうときじ肉によく合う。きじ肉はさっぱりとしている。気温が下がると甘いモノを食べたくなるのだが、温かい上に甘い味付けはうれしい。


大川嶺を越える雲と風



面河渓の紅葉が見頃には少し早かったこともあり、大川嶺の紅葉に期待がまったくなかったわけではない。が、1500m付近だということを考えれば、終わっていることは容易に想像できた。

近づくにつれ、見上げた大川嶺方面は雲の中にあることが見て取れる。それまで花を咲かせていたススキは標高が上がるにつれて、すっかり花を散らしてしまっている。最初に姿を現す美川峰では、雲が強い北寄りの風のためにめまぐるしく姿を変えながら越えてゆく。いままで来た中で一番厳しい天候だ。

大川嶺分岐、大川嶺、笠取山へと進むが灰白色の光景が続く。北側に遮るものがない場所では一瞬車体が煽られそうになるのをこらえつつ、笠取山の駐車場(のような場所)まで進み小休止。青い空、太陽、笠取山の山頂などが一瞬見え、すぐに隠される。好天する気配はない。

大川嶺分岐から愛媛県道328号線を下り、ブナ林へ向かう。南側の斜面ということもあるせいか、あれだけ強かった風が嘘のように止む。

路上に散った葉は風によって一カ所に掃き清められていた

大川嶺を訪れた際、好んで写真を撮りに行く場所がある。先日のツーリングでは、雲が手に届きそうな高さを流れていたが、今日はまったく雲の中に入ってしまっている。

風さえなければもう少し耐えられるのだが

遮るものは何もなく、冷たい風が容赦なく吹き付ける中で、寒々とした光景を何とか写真にできないものかと粘ってみる。体の方は、前日に妻が買ってくれたインナーが功を奏して比較的あたたかいのだが、インナーグローブ程度の薄さではカメラを操作したりフィルターやレンズを付け外しする手がおぼつかなくなる。

まだ緑色を残している草も冬を経て白く枯れてしまう

稜線の向こうの辺りの雲の中に居たようだ

天候も紅葉も人間の都合に合わせてはくれない。人間はそれに合わせて、または偶然に巡り合うことで初めて感動を得ることが出来るかもしれない――そんなことを思った久万高原町の紅葉狩だった。

 【メモ】
この日の燃費…29.8km/L(前回分を含む)

2016年11月4日金曜日

ツーリング 嶺北水観

こどもに「表紙と文章が合ってなくない?」と言われたので、今回は表紙寄りの文章で書いてみようと思います。

DABUROKU TOURING No.17発刊


早明浦ダムの堤体は高さ106m、幅400mにもなる
「嶺北」とは高知県の大豊町、本山町、土佐町、大川村を指す


四国の水瓶 早明浦ダム


当初は、高知県香南市にある四国自動車博物館をめざす予定だった。四輪、二輪の往年の名車が展示してあり、メグロやBSAといったW650を乗る自分としては心惹かれる車両があるのだ。

愛媛から高知に向かう道は高速道路をはじめ、国道33号線、国道494号線、国道194号線など様々ある。時間はかかるが国道194号線、途中から高知県道17号線へと進み早明浦ダム湖沿いを走ることにした。

ダム湖沿いのコーナーが連続する県道では時間を稼ぐことは難しい。だが、コーナーからの立ち上がり、アクセルを開いた時に辺りと体を震わす排気音はノーマルマフラーといえども実に心地良い。W650に乗っているということを実感できる道でもある。

高知県大川村役場付近にあった案内図

大川村役場付近で小休止。ここに来るまでに興味をそそられる脇道を幾つも振り切ってきたのだが、こういった案内図を見てしまうと、四国自動車博物館に行く気持ちがだんだん萎えてくる。

恐らく、「あの目的地に行くにはあと何時間(何分)」と考えながら走ることと、「この先に何があるのだろう」という好奇心を持ち続けながら走ることとを天秤にかけた時、後者の方が性に合っているのだろう。それでもこの時点では、当初の目的を果たすつもりでいた。

早明浦ダム湖に架かる上吉野川橋は全長321m

見上げれば澄んだ青空、視線を下に落とせば広大なダム湖。そうした光景を求めてか、すれ違うツーリングライダーも多い。冬将軍到来までツーリングシーズンも残り少なく、晴天の休日を待ち焦がれた人も多いのだろう。

早明浦ダムを訪れたのは2回目。前回は下から見上げただけだったこともあり、今回は堤体の上を進んでみることにした。

早明浦ダムの堤体

堤体の中央付近が本山町と土佐町の境

見下ろすとその高さに目を見張る

その広大な湖面は1枚の写真には収まりきらない

貯水池の面積は7.5キロ平方メートル、甲子園球場の約188倍。総貯水量は31600万立方メートル、25メートルプールの約75万杯分にもなるという。

早明浦ダムの周囲を散策していると、四国自動車博物館に行く気持ちがいよいよ萎えてくる。それを決定的にしたのが下の土佐町の観光案内図を見た時だった。というより、高知県道17号線を選択した時点でこうなることは分かっていたという方が正確かもしれない。

季節を考えれば左上の「アメガエリの滝」は良さそうだ

この時点で午後1時だっただろうか。日没が早くなった季節でもある。計画変更は早いほうが良い。国道439号線を進み、途中、平石の乳イチョウ見て、高知県道6号線に入りアメガエリの滝・瀬戸川渓谷に立ち寄ることにした。

秘境三樽権現の滝 土佐町平石


平石地区の入口にある案内板

平石の乳イチョウは案内板では「日本一公孫樹」と書かれている。樹齢800年ともなれば、「日本一」と冠しても良いのかもしれない。しかし訪れてみると今年は夏が暑く、また秋に入ってからも気温が高かったせいか、紅葉には程遠い。そこで滝の絵が描かれている「三樽権現」を訪れてみることにした。

駐車場で役立ったスタンドホルダー

落差7m。水の流れが円筒状に岩肌を削る

木の根が岩を鷲掴みするようにして自らを支えていた

駐車場には「望郷の碑」がある。「樽(たる)とは水の流れ落る滝壺を意味し、滝左岸の字名を下樽と呼び 上流に通称中樽・上樽と呼ぶ滝壺があり併せて三樽と称し その谷を神ノ谷(こうのたに)という」とある。滝壺のすぐそばには社があることからも、古くから信仰を集めてきたことがわかる。

三樽権現の滝の駐車場に戻ってきたのは午後2時半を回っていただろうか。午前中、早明浦ダム湖を照らした太陽の光は青かったが、駐車場を囲む杉木立を照らすそれはすでにオレンジ色を含んでいる。アメガエリの滝は恐らく谷の中にあるだろうからあまりのんびりしていると太陽が周囲の山によって隠されてしまうだろう。

風景写真家なら絶好のタイミングを狙ってその場所を訪れるのだろうが、行き当たりばったりのツーリングである上に、写真家でもない。ギリギリの線で陽光に照らされたアメガエリの滝が撮れるかどうかと思いながら出発した。

アメガエリの滝をめざしダートを行く


国道439号線から高知県道6号線に入り瀬戸川渓谷の案内に従って進んでいるものの、今ひとつ道が合っているかどうか確信が持てない。地元の方に道を尋ねたところ、道は合っていると言った後でもう一つ何か言いたそうな表情だったのが気になる。

しばらく進むと交通整理の警備員に止められる。時間通行制限に行き当たってしまったのだ。どうやら見落としていたようだ。聞けば40分後でないと通してもらえない。地元の方が何か言いたそうな顔をしていたのはこのことだったのかと今になって理解する。アメガエリの滝をあきらめて普通に帰ろうかと少しだけ引き返し、小休止していた時のことだった。

高知ナンバーの車が時間通行制限の道を行く。しばらくすると警備員に止められたのだろう、引き返してきたと思ったら「陣ヶ森」の案内のある狭い道を進んでいくではないか。「陣ヶ森」には登ったことはないが四国百名山の一つで、名前だけは聞いたことがある。もしかしたら地元の人が知る迂回路があるのではないか、迂回路でないとしても陣ヶ森の近くまで行けるのならばと思い、後を追うことにした。

しばらく進むと本線から右折する方向に「展望台」の案内。しかし行く道はダート。その道を先ほどの車が進んでいる。車で行けるならバイクでも行けるはずと再び後を追うが、程なく進むと車が先に行ってくれと合図する。どうやら悪路に躊躇して諦めたらしい。すり抜ける際に見えた同乗者がスマートフォンで道路検索をしていたところを見ると、高知ナンバーながら地元中の地元の車ではなかったようだ。

迂回路なのかそうではないのか、もはや展望台にさえ行ければとの思いのみでダートを登る。が…。

展望台への道は雑草の波

展望台までどれだけ歩けばよいのか分からない深い雑草の道…。一方、直進方向には「高峰神社」の案内がある。展望台を諦めた今、高峰神社へ行くべきか、引き返すべきか。人の往来があるのなら高峰神社へ行けるだろうと考え、進んでみたものの道はさらに悪くなる一方。

少しだけ良くなったところで小休止

鬼北町の綱付山や大洲市の神南山に向かうダートを考えればかなり走りやすい方だ。しかしこの道がどこに向かうのかが一向に分からない。神社があるのなら人里が近いかもしれないが、山中にひっそりと建つ神社も見てきたことを思えば、さすがに不安は隠し切れない。仕方なくスマートフォンで現在地を確認したところ、高知県道6号線を迂回できる事がわかる。そうと分かれば進むしかない。

ようやく高知県道6号線と合流

雨が川となりダートを幾筋も深く削る。転倒に気をつけながらやっとの思いで高知県道6号線に合流しほっと胸を撫で下ろす。ジムニーなど4WDで車高が高ければ走破できるかもしれないが、追い抜いた車ではとても無理だろう。時計を見ると、警備員が通行を許す時間になっていたのだが、これはこれで旅の良い思い出だ。

瀬戸川渓谷とアメガエリの滝の案内に従って高知県道6号線から離脱。目的地にたどり着いた時には、すでに滝を囲む谷全体が日陰になっていた。一方、谷に響く滝の音からも水量と落差のあることが想像され、駐車場から滝壺までの遊歩道を降るほどに、その音が大きくなってゆく。

落差約30m。横幅が広く2段に落ちる滝

日陰になった後でも表情は豊かだ

写真を撮っていると辺りの木々は揺れていないにもかかわらず、頬が風に洗われる。滝の水流が生み出す風だ。滝壺では激しく水しぶきが上がるが、すぐに静かな流れに変わり、下流へと降る。そして巨岩の隙間や落差が生じる所では再び勢いを増し、ついには吉野川へと合流する。紅葉期に訪れれば、さらに美しい姿を見せてくれるのだろう。

アメガエリの滝を過ぎ、さらに上流に進めば稲叢ダムなどもあるが、今日はここまでとしておこう。ちなみに展望台へ向かうダートで追い抜いた車もアメガエリの滝を訪れていた。どうやらバックで引き返し(それも大変だったと思うが)、時間制限を待ってから県道を進んできたのだろう。無事で安心した。

帰り道は再び高知県道17号線を行く。空には三日月が鋭く輝き、川べりに点在する家々にも明かりが灯っている。先日、いの町高藪で薄暮の高藪取水堰を訪れたのだが、一帯の静けさの中でどういった表情を見せているのか楽しみにしながら家路を急ぐ。
※いの町は嶺北ではないが、高藪取水堰をどうしても写真に収めておきたかった。

高藪取水堰を上流側から

水は自然の中で様々に表情を変え、また自然それ自体を変える。そして水の周囲には人々の日々の営みや受け継がれてきた歴史がある。そんなことを実感した、嶺北ツーリングだった。

【メモ】
この日の燃費
1回目の給油…23.3km/L(出発前・前回大田尾峠越などの分)
2回目の給油…26.1km/L(愛媛に戻ってからの給油)

うへ〜、なんか堅苦し〜文章だなぁ〜。こうなったら「DABUROKU TOURING」の書体をポップにしようかなぁ〜。