キャンプ

2016年11月4日金曜日

ツーリング 嶺北水観

こどもに「表紙と文章が合ってなくない?」と言われたので、今回は表紙寄りの文章で書いてみようと思います。

DABUROKU TOURING No.17発刊


早明浦ダムの堤体は高さ106m、幅400mにもなる
「嶺北」とは高知県の大豊町、本山町、土佐町、大川村を指す


四国の水瓶 早明浦ダム


当初は、高知県香南市にある四国自動車博物館をめざす予定だった。四輪、二輪の往年の名車が展示してあり、メグロやBSAといったW650を乗る自分としては心惹かれる車両があるのだ。

愛媛から高知に向かう道は高速道路をはじめ、国道33号線、国道494号線、国道194号線など様々ある。時間はかかるが国道194号線、途中から高知県道17号線へと進み早明浦ダム湖沿いを走ることにした。

ダム湖沿いのコーナーが連続する県道では時間を稼ぐことは難しい。だが、コーナーからの立ち上がり、アクセルを開いた時に辺りと体を震わす排気音はノーマルマフラーといえども実に心地良い。W650に乗っているということを実感できる道でもある。

高知県大川村役場付近にあった案内図

大川村役場付近で小休止。ここに来るまでに興味をそそられる脇道を幾つも振り切ってきたのだが、こういった案内図を見てしまうと、四国自動車博物館に行く気持ちがだんだん萎えてくる。

恐らく、「あの目的地に行くにはあと何時間(何分)」と考えながら走ることと、「この先に何があるのだろう」という好奇心を持ち続けながら走ることとを天秤にかけた時、後者の方が性に合っているのだろう。それでもこの時点では、当初の目的を果たすつもりでいた。

早明浦ダム湖に架かる上吉野川橋は全長321m

見上げれば澄んだ青空、視線を下に落とせば広大なダム湖。そうした光景を求めてか、すれ違うツーリングライダーも多い。冬将軍到来までツーリングシーズンも残り少なく、晴天の休日を待ち焦がれた人も多いのだろう。

早明浦ダムを訪れたのは2回目。前回は下から見上げただけだったこともあり、今回は堤体の上を進んでみることにした。

早明浦ダムの堤体

堤体の中央付近が本山町と土佐町の境

見下ろすとその高さに目を見張る

その広大な湖面は1枚の写真には収まりきらない

貯水池の面積は7.5キロ平方メートル、甲子園球場の約188倍。総貯水量は31600万立方メートル、25メートルプールの約75万杯分にもなるという。

早明浦ダムの周囲を散策していると、四国自動車博物館に行く気持ちがいよいよ萎えてくる。それを決定的にしたのが下の土佐町の観光案内図を見た時だった。というより、高知県道17号線を選択した時点でこうなることは分かっていたという方が正確かもしれない。

季節を考えれば左上の「アメガエリの滝」は良さそうだ

この時点で午後1時だっただろうか。日没が早くなった季節でもある。計画変更は早いほうが良い。国道439号線を進み、途中、平石の乳イチョウ見て、高知県道6号線に入りアメガエリの滝・瀬戸川渓谷に立ち寄ることにした。

秘境三樽権現の滝 土佐町平石


平石地区の入口にある案内板

平石の乳イチョウは案内板では「日本一公孫樹」と書かれている。樹齢800年ともなれば、「日本一」と冠しても良いのかもしれない。しかし訪れてみると今年は夏が暑く、また秋に入ってからも気温が高かったせいか、紅葉には程遠い。そこで滝の絵が描かれている「三樽権現」を訪れてみることにした。

駐車場で役立ったスタンドホルダー

落差7m。水の流れが円筒状に岩肌を削る

木の根が岩を鷲掴みするようにして自らを支えていた

駐車場には「望郷の碑」がある。「樽(たる)とは水の流れ落る滝壺を意味し、滝左岸の字名を下樽と呼び 上流に通称中樽・上樽と呼ぶ滝壺があり併せて三樽と称し その谷を神ノ谷(こうのたに)という」とある。滝壺のすぐそばには社があることからも、古くから信仰を集めてきたことがわかる。

三樽権現の滝の駐車場に戻ってきたのは午後2時半を回っていただろうか。午前中、早明浦ダム湖を照らした太陽の光は青かったが、駐車場を囲む杉木立を照らすそれはすでにオレンジ色を含んでいる。アメガエリの滝は恐らく谷の中にあるだろうからあまりのんびりしていると太陽が周囲の山によって隠されてしまうだろう。

風景写真家なら絶好のタイミングを狙ってその場所を訪れるのだろうが、行き当たりばったりのツーリングである上に、写真家でもない。ギリギリの線で陽光に照らされたアメガエリの滝が撮れるかどうかと思いながら出発した。

アメガエリの滝をめざしダートを行く


国道439号線から高知県道6号線に入り瀬戸川渓谷の案内に従って進んでいるものの、今ひとつ道が合っているかどうか確信が持てない。地元の方に道を尋ねたところ、道は合っていると言った後でもう一つ何か言いたそうな表情だったのが気になる。

しばらく進むと交通整理の警備員に止められる。時間通行制限に行き当たってしまったのだ。どうやら見落としていたようだ。聞けば40分後でないと通してもらえない。地元の方が何か言いたそうな顔をしていたのはこのことだったのかと今になって理解する。アメガエリの滝をあきらめて普通に帰ろうかと少しだけ引き返し、小休止していた時のことだった。

高知ナンバーの車が時間通行制限の道を行く。しばらくすると警備員に止められたのだろう、引き返してきたと思ったら「陣ヶ森」の案内のある狭い道を進んでいくではないか。「陣ヶ森」には登ったことはないが四国百名山の一つで、名前だけは聞いたことがある。もしかしたら地元の人が知る迂回路があるのではないか、迂回路でないとしても陣ヶ森の近くまで行けるのならばと思い、後を追うことにした。

しばらく進むと本線から右折する方向に「展望台」の案内。しかし行く道はダート。その道を先ほどの車が進んでいる。車で行けるならバイクでも行けるはずと再び後を追うが、程なく進むと車が先に行ってくれと合図する。どうやら悪路に躊躇して諦めたらしい。すり抜ける際に見えた同乗者がスマートフォンで道路検索をしていたところを見ると、高知ナンバーながら地元中の地元の車ではなかったようだ。

迂回路なのかそうではないのか、もはや展望台にさえ行ければとの思いのみでダートを登る。が…。

展望台への道は雑草の波

展望台までどれだけ歩けばよいのか分からない深い雑草の道…。一方、直進方向には「高峰神社」の案内がある。展望台を諦めた今、高峰神社へ行くべきか、引き返すべきか。人の往来があるのなら高峰神社へ行けるだろうと考え、進んでみたものの道はさらに悪くなる一方。

少しだけ良くなったところで小休止

鬼北町の綱付山や大洲市の神南山に向かうダートを考えればかなり走りやすい方だ。しかしこの道がどこに向かうのかが一向に分からない。神社があるのなら人里が近いかもしれないが、山中にひっそりと建つ神社も見てきたことを思えば、さすがに不安は隠し切れない。仕方なくスマートフォンで現在地を確認したところ、高知県道6号線を迂回できる事がわかる。そうと分かれば進むしかない。

ようやく高知県道6号線と合流

雨が川となりダートを幾筋も深く削る。転倒に気をつけながらやっとの思いで高知県道6号線に合流しほっと胸を撫で下ろす。ジムニーなど4WDで車高が高ければ走破できるかもしれないが、追い抜いた車ではとても無理だろう。時計を見ると、警備員が通行を許す時間になっていたのだが、これはこれで旅の良い思い出だ。

瀬戸川渓谷とアメガエリの滝の案内に従って高知県道6号線から離脱。目的地にたどり着いた時には、すでに滝を囲む谷全体が日陰になっていた。一方、谷に響く滝の音からも水量と落差のあることが想像され、駐車場から滝壺までの遊歩道を降るほどに、その音が大きくなってゆく。

落差約30m。横幅が広く2段に落ちる滝

日陰になった後でも表情は豊かだ

写真を撮っていると辺りの木々は揺れていないにもかかわらず、頬が風に洗われる。滝の水流が生み出す風だ。滝壺では激しく水しぶきが上がるが、すぐに静かな流れに変わり、下流へと降る。そして巨岩の隙間や落差が生じる所では再び勢いを増し、ついには吉野川へと合流する。紅葉期に訪れれば、さらに美しい姿を見せてくれるのだろう。

アメガエリの滝を過ぎ、さらに上流に進めば稲叢ダムなどもあるが、今日はここまでとしておこう。ちなみに展望台へ向かうダートで追い抜いた車もアメガエリの滝を訪れていた。どうやらバックで引き返し(それも大変だったと思うが)、時間制限を待ってから県道を進んできたのだろう。無事で安心した。

帰り道は再び高知県道17号線を行く。空には三日月が鋭く輝き、川べりに点在する家々にも明かりが灯っている。先日、いの町高藪で薄暮の高藪取水堰を訪れたのだが、一帯の静けさの中でどういった表情を見せているのか楽しみにしながら家路を急ぐ。
※いの町は嶺北ではないが、高藪取水堰をどうしても写真に収めておきたかった。

高藪取水堰を上流側から

水は自然の中で様々に表情を変え、また自然それ自体を変える。そして水の周囲には人々の日々の営みや受け継がれてきた歴史がある。そんなことを実感した、嶺北ツーリングだった。

【メモ】
この日の燃費
1回目の給油…23.3km/L(出発前・前回大田尾峠越などの分)
2回目の給油…26.1km/L(愛媛に戻ってからの給油)

うへ〜、なんか堅苦し〜文章だなぁ〜。こうなったら「DABUROKU TOURING」の書体をポップにしようかなぁ〜。

2 件のコメント:

  1. こんばんは、わき道に入ってたいへんそうでしたね。でも、僕もそういうトラブルのあるツーリングは思い出に残ります。
    しかし、前回の東洋のマチュピチュの別子銅山や早明浦ダム湖などとても興味のある場所が多いです。
    タイトルの文体はそのままでよいと思いますよ。風景写真家ならぬツーリング風景写真家のrideさんの文章と写真の詰まったDABUROKU TOURINGは自分がなかなかツーリングにタイトルの文体はそのままでよいと思います。行けない時の楽しみのひとつです。

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    1. こうたさん、コメントありがとうございます^^
      トラブルがあると色んな意味で印象深いツーリングになりますよね。
      ツーリング風景写真家!なんかかっこいい響きですね〜。かなり照れくさいですが、それぐらいの気持ちで写真が上達するようがんばってみますw
      では、タイトルの文体はそのままに、なるべく旅情感の出る文章になるよう心がけてみま〜す。

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